研究内容
ヒトのパフォーマンスを最大化するための
「コンディショニング」を探求
研究理念
「体験し、試み、還元するスポーツ科学」
本研究室では、現場での体験を重視し、科学的根拠に基づいた試みを行い、得られた知見を社会に還元しています。 毛髪中に蓄積されたホルモン分析による長期ストレス評価や、表情変化を用いた覚醒状態の予測など、 世界に先駆けた革新的な評価法を開発。fNIRS・fMRIによる脳機能測定で運動と認知の関係を解明し、 VR技術を活用した新しいトレーニング法の効果検証まで、多角的なアプローチで トップアスリートから一般の方々まで、すべての人のパフォーマンス向上とウェルビーイング実現を目指しています。
3つの探求領域
体
Physical
毛髪ストレス因子(コルチゾール)や末梢血乳酸などの生理学的指標を用いて、女性アスリートのトレーニングストレスや運動性疲労を評価。フォームローラーによる乳酸クリアランス促進効果の実証や、低酸素環境下での運動が身体機能に与える影響を科学的に解明し、最適なコンディショニング法を提案します。
心
Mental
毛髪中のコルチゾール・オキシトシン測定により、従来では評価できなかった長期的な慢性ストレスとメンタルヘルスを可視化。低酸素環境下での運動による認知疲労のメカニズム(末梢血乳酸の関与)を解明するとともに、運動時の表情変化から覚醒状態を予測する新技術の開発にも取り組んでいます。
技
Technical
VR環境での運動がワーキングメモリーやポジティブな気分に及ぼす効果を実証。野球における選球能力と空間実行機能の関係を明らかにし、バッティングパフォーマンス向上のための科学的根拠を提供。fNIRS・fMRIを用いた脳活動測定により、技術向上と認知機能の関連性を脳レベルで解明します。
疲労予防と認知機能向上
運動・環境・認知機能の統合的理解
運動は筋機能や心肺機能だけでなく、認知機能(実行機能、ワーキングメモリー、注意集中)にも大きな影響を与えます。 本研究室では、VR環境での運動がワーキングメモリーとポジティブな気分を向上させることを実証しました(Mental Health and Physical Activity, 2024)。 現在は、運動中の表情変化から脳疲労状態を予測する新技術の開発にも取り組んでいます。
一方、低酸素環境下では運動による認知機能向上効果が減弱することを明らかにし(NeuroImage, 2018)、 その原因が運動中の低酸素血症にあることを特定しました(Scientific Reports, 2022)。 現在は、認知疲労の末梢・中枢の共通する生理要因を、筑波大学ARIHHPとの共同研究で検証を進めています。
測定機器
研究の目標
最適な運動条件の特定と、アスリートの運動性疲労・認知疲労への介入法の確立

パフォーマンス最大化

革新的バイオマーカーによるコンディション評価
本研究室では、毛髪中のコルチゾールが女性サッカー選手のトレーニングストレスの生理学的指標になることを世界で初めて実証しました(European Journal of Applied Physiology, 2024)。 さらに、毛髪中のオキシトシンなど新しいバイオマーカーを用いた慢性ストレス評価に関する研究も進めています。
また、心拍変動(HRV)を用いたラート体操トップ選手のメンタルヘルス評価法を開発しました(Applied Psychophysiology and Biofeedback, 2023)。 リカバリー面では、フォームローラーが高強度運動後の乳酸クリアランスを改善することを実証しました(Sports, 2024)。
🏆これまでの対象選手
- •大学生アスリート
- •体操(ラート)日本代表選手
- •女子バスケットボール日本トップリーグ選手
💡革新的評価指標
毛髪および表情などの新規バイオマーカーを用いた評価法を開発
研究業績
Research Achievements
革新的評価法の開発
毛髪中のコルチゾール・オキシトシン分析により、従来では測定できなかった長期ストレス・メンタルヘルスの評価を可能に
VR技術の活用
仮想現実環境を用いた認知機能測定やトレーニング効果の検証により、新しいスポーツ科学の可能性を探求
脳機能の可視化
fNIRS・fMRIを活用して、運動と認知機能の関係を脳レベルで解明し、科学的根拠に基づくトレーニング法を提案
トップアスリートとの共同研究
オリンピック・世界選手権レベルの日本代表選手との共同研究により、現場に即した実践的な知見を創出
主要論文
Hair Hormones and Heart Rate Variability as Chronic Stress Biomarkers in a Female Long-Distance Runner: A 22-Month Longitudinal Case Study
Research Square (preprint)
DOI: 10.21203/rs.3.rs-7872377/v1Pitch Selection Ability and Spatial Executive Function Independently Predict Baseball Batting Performance
Sports
DOI: 10.3390/sports13100367Facial Lower-Region Changes During High-Intensity Exercise as Predictors of Reduced Arousal State
PsyArXiv (preprint)
DOI: 10.31234/osf.io/6dbhj_v1Oxytocin may reduce the accumulation and effects of chronic stress: An exploratory study using hair samples
bioRxiv (preprint)
DOI: 10.1101/2025.04.15.649015Foam Rolling Intervention Improves Lactate Clearance After High-Intensity Exercise
Sports
DOI: 10.3390/sports12110303Exercising with virtual reality is potentially better for the working memory and positive mood than cycling alone
Mental Health and Physical Activity
DOI: 10.1016/j.mhpa.2024.100641Hair cortisol is a physiological indicator of training stress for female footballers
European Journal of Applied Physiology
DOI: 10.1007/s00421-024-05571-7The Potential of Heart Rate Variability Monitoring for Mental Health Assessment in Top Wheel Gymnastics Athletes: A Single Case Design
Applied Psychophysiology and Biofeedback
DOI: 10.1007/s10484-023-09585-3Cognitive fatigue due to exercise under normobaric hypoxia is related to hypoxemia during exercise
Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-022-14146-5The Effects of Acute Virtual Reality Exergaming on Mood and Executive Function
JMIR Serious Games
DOI: 10.2196/38200Neural basis for reduced executive performance with hypoxic exercise
NeuroImage
DOI: 10.1016/j.neuroimage.2017.12.091Hypoxia-induced lowered executive function depends on arterial oxygen desaturation
The Journal of Physiological Sciences
DOI: 10.1007/s12576-018-0603-y進行中の研究プロジェクト
健全な発達を促す身体活動に向けた毛髪中コルチゾールによる慢性ストレス評価法確立
提供機関: 日本学術振興会
種別: 挑戦的研究(開拓)
運動誘発性末梢血乳酸上昇による前頭前野乳酸上昇が認知疲労に関わるか
提供機関: 筑波大学ARIHHP
種別: 共同利用・共同研究
運動による実行機能低下の神経機構の解明 - 脳内乳酸濃度の役割
提供機関: 明治安田厚生事業団
種別: 若手研究者のための健康科学研究助成
運動による実行機能低下の生理機構: 末梢血乳酸がバイオマーカーとなりうるか
提供機関: カシオ科学振興財団
種別: 研究助成